2000年2月13日、渋谷Egg-manで「ジョンロード・ナイト」という熱い熱いセッションライブが繰り広げられた。
 「ジョンロード」とは、70年代のハードロック・シーンで一世を風靡したバンド「ディープ・パープル」のキーボーディストのこと。今回のライブでは、難波 弘之、石黒彰、増田 隆宣の3人のキーボーディストが3チームに分かれ、ディープ・パープルのそれぞれの年代をテーマに彼のプレイを再現してくれたのだ。
 実はこのセッション、増田氏が参加していたB'zのライブを見た石黒氏が、2次会の飲み屋で演奏勝負を挑んだことから始まったんだとか。増田氏は「ホントにやるとは思ってもみなかった」そうだが、彼の知らないところで話はトントン拍子に進み、豪華メンバーの参加が続々と決定したらしい。しかも、メンバーのほとんどがその飲み屋の客というから微笑ましいやら恐ろしいやら(笑)。

 18時半開場。アイドルのコンサートのような場所の取り合いこそないものの、あっと言う間に満員に。本番5分前にもなると、移動するのも大変なほどの混みようだ。
 そして、19時。ライブは、ほぼ時間通りに始まった。まずは主催者の児玉氏から軽く挨拶。そのあと「一人目のジョンロードの登場です」という紹介で難波 弘之氏が現れ、いよいよ1組目がスタートした。

 難波チームは、難波 弘之(Key)、本間 大嗣(Dr)、高橋 竜(B)、大谷 令文(G)と、いずれも強力なメンツ。まずは、おとなしめな曲「HEY JOE」を演奏。2曲目から青木 秀一(Vo)が加わり、「LALENA」や「I'M SO GRAD」などを次々と披露した。ラストは名曲「HUSH」。どうやら、難波チームはディープ・パープルの第1期の曲で構成されているようだ。
 難波氏の音は、彼の物腰柔らかな性格そのまま、非常にウォームで繊細なのが印象的だった。

 続いて石黒チーム。メンツはほぼ難波チームのまま、難波氏と石黒氏だけが入れ替って行われた。しかし、選曲もあるのだろうが、キーボーディストひとり変わっただけでバンドの音が大きく変化。やはりディープ・パープルというバンドは、キーボードの役割が大きく、大切な存在なのだと再確認させられた。
 こちらのチームは、第4期の曲を中心に構成されていた。また、2曲目の「GETTIN' TIGHTER」と3曲目の「'THIS TIME AROUND'~OWED TO 'G'」の間に挟まれた石黒氏のキーボードソロは、正確かつ緻密な演奏で、彼の持ち味を存分に披露していた。特に、ジャジーなピアノソロがとても印象的だった。
 石黒氏の音は、難波氏とは対照的にシャープでハイファイな感じ。同じ機材を使用しているのに、演奏者によってこうも聞こえ方が変わるものかと感心させられた。

 いよいよ、3バンド目。増田氏の出番だ。まずは彼のみが登場し、司会の児玉氏とトーク。そこへ先ほど出番を終えた石黒氏が、「買ってきたんだけど、使うの忘れてたから」と、右手に「付けヒゲ」を持って現れた。増田氏はそれを受け取り、おもむろにヒゲを装着。これが似合うというか似合わないというか、実にユーモラスで、すっかり会場を和ませていた。
 そんな雰囲気を知ってか知らずか、増田氏はヒゲをつけたままオルガンに向かい、いきなりクラシカルなバッハ調のソロを弾き始めた。それをBGMに黒瀬 蛙一(Dr)、満園 庄太郎(B)、小西 昌人(G)が登場。前の2バンドとはガラリと違うメンツだ。
 オープニングは、まずドラムの軽快なリズムからスタート。なんの曲だろうと思っていると、ベースとギターが「YOU FOOL NO ONE」のリフへと変わり、森川 之雄(Vo)が登場した。1曲目は「SPEED KING」。それまでのバンドがどちらかというと繊細な音だっただけに、ROCKな感じが非常に新鮮だ。
 続いては、ベース、ドラム、キーボードのみでジョン・ロードのソロアルバムから「BACH ONTO THIS」を披露。増田氏は、この曲について「ここ何年かでこんなに練習したのは初めて」と言っていたが、さすが本番では華麗なプレイを見せていた。
 山場を終えると、今度はボーカルに二井原 実を迎え入れて「HIGHWAY STAR」を熱演。小西氏のいぶし銀ではあるが、本家のギタリスト、リッチー・ブラックモアにそっくりなプレイと、二井原氏の存在感で会場のテンションはピークに。最後は、1曲目を熱唱した森川氏が再び登場し、二井原氏とのツインボーカルで迫力満点の「BURN」を聞かせてくれた。増田チームは“黄金の2期”と呼ばれる、ディープ・パープルが最もパワフルな中期の曲を中心に選曲。それに負けない力強い演奏を聞くことが出来た。

 アンコールは、なんとこれまでの3バンドが混合、しかもキーボーディストは3人とも参加という実に贅沢なバンドが登場した。増田氏はキーボードセット、難波氏と石黒氏はショルキーで、まずは「PICTURES OF HOME」を演奏。ショルキーの2人がオブリをハーモニーで奏でていたのが印象的だった。
 続いては、なんとギター抜きで「BLACK NIGHT」を披露。ギターパートを難波氏と石黒氏がショルキーで演奏するという、ひと味違った「BLACK NIGHT」を楽しむことが出来た。

 全ての演奏が終了すると、難波氏が参加したミュージシャンをひとりひとり紹介。改めて見ると、みんな一癖も二癖もありそうなミュージシャンばかりで非常に強力だ。それだけに、実にエキサイティングなセッションだった。

 最後になったが、増田氏の音についてもう一筆。他の2人に比べて随分太く、歪みの効いた鋭い音を出していたように思う。ま、その分、繊細さや華麗さが失われていた気もするが、ガッツのある「ぶっとい」音がとても心地良かった。

 3人で何を話しているのでしょうか?きっと"ネタ"でも仕込んでいるのかも。
 ベストなプレイをするため、会場直前にも入念なチェックを。
 黄金の右手が唸りをあげて暴れてます。
 ソロプレイには力が入ります。
 アンコールで石黒氏との掛け合い。隣からあおられている増田氏、意外に冷静!?
 最後まで、お疲れさまでした。
セットリストへGO!